声の網

　冬コミ落選したので、大阪インテに向けて戦闘。
　
　サンドイッチ本の再録＆書き下ろし第二弾。
　求められ、殺される。　It is requested, and it is killed.　英日西の後日談。ロマ視点。




　「きーくぅ？」
　疲れ切った寝顔を覗き込みながら名前を呼ぶ。
　そういえば自分は何時から彼を聞くと呼ぶようになったのだろう。
　明確に日付は覚えていないが、ああ、俺はこいつが好きだなぁ、と思った時から呼び始めたのに間違いはないはずだ。
　「朝飯作ったぞー。冷めたの食いたくなきゃあ、起きろー」
　やわい頬を指先で突く。
　にゅ？　と愛らしい声を立てた黒目がゆっくりと開いた。
　「……おや？　ロヴィ君？」
　「おうよ」
　「おはようございます」
　「はよ」
　「トニョさんは、どうされましたか」
　身体中の軋みに堪えるような緩慢さで上半身を起こした本田の肩からするりとタオルケットが滑り落ちる。
　降り注ぐ陽光の下ではカリエドに愛されたというよりは、凌辱されたと言った方が近い痛そうな酷い跡があからさまになった。
　「仕事、だってよ。良かったな。これで身体が少しは休まるだろ」
　「ロヴィ君……」
　ロヴィーノが大好きな本田特有の困った風な笑いを浮かべた細い肩にもこもこのバスローブを羽織っらせて頭を撫ぜる。
　「シャワー軽く浴びっか、このやろー」
　「ご飯、冷めますよね」
　「温め直してやっぞ」
　「では、お言葉に甘えて、シャワーお借りしますね」
　人形かロボットのようにぎこちなくベッドから降ろされた足は、絨毯の上に立てずに滑ってしまう。
　「っ！」

　「と！」
　床に倒れ込む前に腰を拾って抱き留める。
　「す！　みません」
　「いいって。腰立たねんだろ？　このまま抱えててやるよ」
　「ちょ！　ロヴィ君！」
　一度やってみたかった姫抱っこをする。
　大柄ではない自分でも華奢と言える本田の身体はロヴィーノの腕の中にも綺麗に収まった。
　「重いですよ」
　「軽いぜ？　っつーか。あんだけ食ってもこんな軽いとか、お前。マジやばいだろうが、こんちくしょー」
　「やばくないです。って言うか、やばいかもしれません、この状況が！」
　「心配すんなって。トーニョは眉毛と違って盗聴盗撮しねぇし。お前が黙ってりゃあ、無問題なんだぜ」
　「そうはおっしゃいますけど。トニョさんの動物的な勘って本当に凄いんですよ！」
　力説する本田の額にキスと落としつつ、バスルームまで運ぶ。
　このまま一緒に入って散々吐き出された中の精液まで、自分の性器をぶち込んで掻き出したいが止めておく。
　まだ、時期ではない。
　「そこを上手くスルーしてこそ、本田菊だろ？」
　バスルームの前に下ろす指先でバスローブを割る。
　あらわになった太腿に指を這わせれば、凌辱の痕と呼ぶのにふさわしい鮮血と精液が混じった物がついてきた。
　「トーニョとこれからも付き合って行く気があんなら身に着けとけよ。必須スキルだぜ」
　本田に見せつけるように、指の汚れを舐め取る。
　頬に朱が上ったのを見計らって、でこぴんをして背を向けた。
　何かを言いたい気配は数秒。
　聞き慣れた諦めの溜息に続いて、バスルームのドアが開く音がする。　着替えの準備をしているうちに水音が耳に届く。
　時折、掠れた声がロヴィーノの獣欲を刺激した。
　「んっとに、性質悪りぃぜ、どちくしょうが」


　最近裏枢軸二人が楽しくて困ります。
　ごーごーいけいけなロヴィーノもいいですが、腹黒い画策を念入りにする彼も大好きです。
　ああ、マフィア長編も書きたい。
　好きな作家さん達が、素敵な作品を書かれているんですけど、まだ読み足りない。